2018年
5月
07日
月
もう、中毒ですよね。
本屋さんで「新撰組」というタイトルを見ると手に取ってしまう。
これまで、新撰組及び関連本を何冊読んだだろうか。
司馬遼太郎の「新選組血風録」、「燃えよ剣」。
池波正太郎の「幕末新撰組」、「近藤勇白書」。
子母澤寛の新選組三部作/「新選組始末記」「新選組遺聞」、「新選組物語」。
浅田次郎の「壬生義士伝」、「一刀斎夢録」。
つかこうへいの「幕末純情伝 龍馬を斬った女」。
大佛次郎の「鞍馬天狗」等々・・・。
どの本を読んでも面白い。
しかし、「新選組」は歴史の教科書にはまず登場しないけど、何故こんなにも人を引き付けるんだろうかね。
そう言えば、坂本龍馬の名前も歴史の教科書から消えるとか消えないとか話題になっていますよね。
坂本龍馬が教科書から消えることになったら、新撰組なんか益々教科書に関係なくなるね。
でも、新撰組は本当に魅力ある集団なんです。
「新選組」の魅力を簡単に言うと、田舎剣術に励んでいた農民の子が、時代の混乱に乗じて成り上がり、倒れゆく幕府のために戦い続け、節義を守り抜いて散っていったという悲壮美。
小説や映画の影響もあるけど、個人個人がとても魅力ある人物なんですよね。
近藤勇、土方歳三、沖田総司、斎藤一、芹沢鴨、山南敬助、伊東甲子太郎、永倉新八、武田観柳斎、藤堂平助、鈴木三樹三郎、原田左之助・・・・・等々。
どの人物も面白い。
今回読んだ門井慶喜「新選組颯爽録」は、司馬遼太郎の「新選組血風録」を意識しているかもね。
近藤勇,土方歳三,沖田総司といった超有名どころの隊士たちの話が3編の他に馬術師範兼勘定方の安富才助,密偵の村山謙吉,文吏の尾形俊太郎といった脚光が当たらない裏方の隊士たちの話が3編、計6編の隊士が描かれています。
新撰組に関して近年判明した新史実を踏まえ、隊士達の生きざまを丁寧に描いており、これまでの新撰組とは一味違う新選組を知ることができました。
土方歳三の剣術は今一だったが、人を自由に操る事が出来る懐が深い人間として描かれていますし、安富才助、村山謙吉などあまりメジャーでない人物も知ることが出来、とても面白く読めました。
新撰組に興味のある方は、是非ご一読を。
2018年
4月
01日
日
若い頃、新宿ゴールデン街で何回かお見かけしたことがある田中小実昌氏のイメージと言えば、TVでハチャメチャなコメントをする酔っぱらいの直木賞作家。
でも、このエッセイを読んで初めて田中小実昌氏の人物像を理解することができました。
氏は、19歳(1944年)で出征し山口県の連隊に入営。
中国で粤漢線鉄道警備の部隊に編入。
中国での苦しい行軍の中でマラリア、コレラに罹り、敗戦直前にアメーバ赤痢の疑いで野戦病院に移送となり終戦。
1946年に呉市に戻り旧制福岡高校を繰上げ卒業し同年無試験で東京大学文学部哲学科に入学。
大学在学中からストリップ劇場での演出助手、進駐軍用将校クラブでのバーテンダー、啖呵売、易者などの職を渡り歩き1952年に東京大学を除籍。
1954年より米軍の医学研究所で化学実験の仕事をし、その傍ら翻訳家として多くのハードボイルド作品を翻訳。
その後、アルバイト時代の経験を活かし本格的な作家活動に。
1979年、「ミミのこと」「浪曲師朝日丸の話」の2作品で直木賞を受賞。
同年、戦争体験や父の姿に題材を取った短編集「ポロポロ」で谷崎潤一郎賞を受賞。
その後は、往年の深夜番組「11PM」をはじめとして、テレビドラマ、映画、CMといった様々な場面で活躍。
新宿ゴールデン街(東京都)の常連で、毎日ゴールデン街で10軒は飲み歩いたらしい。
僕が氏を何回かゴールデン街でお見かけしたのはこの頃(1980年初頃)。
いつも酔っているのでしょうが、飄々とした感じが印象的でした。
今回読了した大庭萱朗(編)「田中小実昌ベスト・エッセイ」には、氏の戦争体験(「勤労奉仕から動員へ」、「父と特高」、「昭和19年」等)、敗戦後進駐軍でのアルバイト他(「やくざアルバイト」、「横田基地のバンブダンプ」、「不動産屋、そして医学研究所」他)、作家活動に入ってからの新宿ゴールデン街での話(「路地に潜む陽気な人々」等)などが収録されています。
クソ真面目な牧師の父を持つ少年の気持ち、戦争体験、敗戦後の進駐軍のこと朝鮮戦争時の日本の状況等々、とても面白いエッセイが満載ですよ。
お勧め本です。
●大庭萱朗(編)「田中小実昌ベスト・エッセイ」
出版社:筑摩書房(文庫本)
値 段:950円+消費税